アイヌ遺骨の研究利用をめぐって

コタンの会と北大開示文書研究会は2017年5月16日、北海道公立大学法人札幌医科大学を訪問し、対応の松村博文・保健医療学部教授に、塚本泰司学長あての質問書を手渡しました。

アイヌ人骨研究利用に関する札幌医科大学への質問書

2017年5月16日

北海道公立大学法人 札幌医科大学
理事長・学長 塚本泰司 様

北大開示文書研究会 共同代表   清水裕二
共同代表   殿平善彦
遺骨返還訴訟原告   小川隆吉
コタンの会   神谷広道
平取アイヌ協会員   木村二三夫
痛みのペンリウク著者   土橋芳美
コタンの会   山崎良雄

質 問 書

私共は全国各地に所蔵されているアイヌ遺骨が一日も早く地元コタンへ帰還されることをめざして、今日まで活動してまいりました。

新聞報道によりますと、現在、北海道大学をはじめとする全国の研究機関などに1676体のアイヌ遺骨が所蔵され、そのうち、札幌医科大学には294体の遺骨が所蔵されて(17年4月20日付北海道新聞)いると聞き及んでおります。

戦前から戦後にかけて、北海道、旧樺太、千島などで発掘され、持ち去られたアイヌ遺骨は人類学者などの研究材料とされ、故郷の土を離れて大学の中に置かれ、長く彷徨い続けてきたのであります。私共は、これ以上、アイヌの遺骨が無断で研究材料として扱われることがあってはならないと強く考えています。すべての遺骨は、発掘されたコタンの土に、安住の地に戻されるべきであります。

しかるに、共同通信社の配信記事(2017年2月26日)によれば、国立科学博物館と山梨大学大学院の研究者が2010年以降、貴大学収蔵の約100人分の遺骨からDNAサンプルを採取していたとのことであり、私どもはその報道に強い衝撃を受けております。

100人のアイヌ遺骨のDNAサンプル採取にあたっては、遺骨の個体が損傷を受けたと思われますが、発掘された遺骨の所属するコタンの構成員であるアイヌあるいはその子孫の了解を得たのでしょうか。

発掘された遺骨のコタンに所属するアイヌあるいはその子孫の了解なしに、遺骨を切断し、サンプル調査を行ったとすれば「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年採択)の精神に反しているのみならず、貴大学が採用しているであろう、人体、人骨などの研究に関する倫理規定にも著しく反するのではないでしょうか。

貴大学は2006年10月に北海道アイヌ協会と「アイヌ人骨の受入・管理・返還等についての覚書」を交わされていますが、発掘された遺骨のコタンの構成員の了解なしに、「覚書」によって貴大学と北海道アイヌ協会がこの度の遺骨の研究に合意したのであれば、不当な合意と言わねばなりません。

よって、私たちは札幌医科大学に以下の質問をいたします。

1 2010年から始められたとするアイヌ遺骨研究が事実であるなら、その経緯をつまびらかにし、使用された遺骨が、どの場所から大学に持ち込まれたかをお伝えください。

2  その研究が、発掘されたコタンの構成員あるいはその子孫の了解を得ているなら、の事実をお伝えください。

3 コタンの構成員あるいはその子孫の了解を得ずに行われたのであれば、研究倫理に悖るのみならず、アイヌの伝統的な宗教的精神を無視した死者への冒涜ともいわねばならぬ行為であります。貴大学の率直な見解をお聞かせください。

4 私たちはすべての収蔵遺骨の一刻も早い地元コタンへの返還・帰還が実現されるべきと考えますが、貴大学の見解をお聞かせください。

以上の質問へのご回答を文書にてお聞かせください。なお、回答は一ヶ月以内にお聞かせくださいますようお願いいたします。その際、改めてお話を伺いに参上したいと考えます。

連絡先 077-0032 北海道留萌市宮園町3-39-8 北大開示文書研究会 三浦忠雄
電 話 0164-43-0128