「サケ漁業権確認訴訟」支援センター > 裁判所への意見陳述

陳述書

高月 勉

1 シベチャリアイヌトライブの会長として

私は、現在、シベチャリアイヌトライブ(旧静内アイヌ協会)の会長です。

私たちは7年前に静内アイヌ協会を立ち上げました。伝統的な文化・風習の保護・伝承、生業を豊かにするために漁業権などの権利を取り戻す、研究者に持ち去られた先祖の遺骨を返還させることなどを目的としています。

そして今年7月には、それらの目的を達成するために、会の名称をシベチャリアイヌトライプに変更しました。シベチャリ(染退川)というのは現在の静内川のことをさします。現在、シベチャリアイヌトライブには50名近くの会員がいます。

この活動の一環として、今年の6月にはアイヌ施策推進法の見直しについての提言活動をラポロアイヌネイションと共に行いました。この提言では、アイヌ文化の推進のためには、経済活動を含めた生活のための文化でなければならないこと、アイヌ語教育、アイヌ文化遺産などアイヌの生活すべてについてがアイヌの視点で行われるように推進法の運用見直しを求めました。この提言には多くのアイヌ団体や個人の賛同がありました。

2 アイヌとしての生い立ち

私は、新ひだか町静内に住んでいます。

私の曾祖母もふは、シベチャリ(静内川)の支流であるケパウ川(現目名川)沿いのコタン出身のアイヌであり、曽祖父野三八はシベチャリ川河口部の下下方(シモケボ)コタン出身のアイヌです。祖父力松はシベチャリ川支流ケパウ川下流沿いのコタン出身のアイヌです。もふと野三八の間に生まれた祖母ちや(明治9年生)は、口に入れ墨をしていました。我が家には、ちやから受け継いだ黒い漆塗りの箱があります。

ちやと力松の子である父力弥は、和人の母ハルと結婚し、私たちは父が建てた家で育ちました。今の住所から300mくらい離れたところです。

父は山仕事で家を留守にすることが多かったのですが、帰ってきたら火を焚いてイナウをお供えしていました。家には、幣を飾る祭壇があり、裏にはイナウの材料になる柳の木がありました。

家の中にはイナウがありましたが、親たちがイナウを作っているところは見たことがありません。親は、子どもたちには見せたくないと思っていたのかもしれません。

3 私は、中学生のとき、同級生から「高月君はハーフだね」と言われました。

私の父がアイヌで、母が和人だという意味だと思いますが、「周りは知っていて、そんなふうに言うんだな」と思いました。母はいつも「アイヌだからってバカにするな」「やることをちゃんとやっていれば、誰からも言われることはない」とよく口にしていました。

妻と知り合って結婚するとき、私がアイヌだという理由で、妻の父から反対されましたが、友人たちの協力で結婚することができました。

子どもが5、6才になったとき、祖父側の親戚と一緒に先祖供養のイチャルパをしましたが、母は妻に「あんたはしなくていいからね」と言っていました。母なりに妻を気遣ったのだと思います。

4 中学校卒業後訓練校に行き、自動車整備の技術と資格を身につけて就職し、その後独立して自分で工場を経営するようになりました。

30才くらいの時、北海道ウタリ協会静内支部(当時)に加入し、いろいろな儀式を見て学ぶ中で、先祖のことや供養を考えるようになりました。

北大が静内から先祖の遺骨を多く持ち去っていたことを知るようになり、遣骨についての勉強会を重ねました。その中で、先祖の遺骨を持ち去られた強い怒りを感じ、アイヌとしてのアイデンティティを意識するようになり、「静内遺骨返還を求めるコタンの会」を結成して、事務局長になりました。

5 遺骨返還について学び、それを求める中で、私はアイヌとしてのアイデンティティを意識するようになり、アイヌとしての誇りを取り戻したい、と強く願うようになりました。

静内も多くのアイヌが居住する地域です。アイヌがこの地でアイヌとして持っていた権利を回復することが、私たちの誇りを取り戻すことだと思っています。

静内は、シャクシャインが和人に対して蜂起したところとして有名ですが、シャクシャイン祭りで古いパスイをいつまでも使って「これが文化だ」というのは、古びた祭具を博物館に飾るようなもので、文化ではないと思います。文化とは、アイヌとしての生活の中で、生きて引き継がれていくものだと思うのです。

アイヌが誇りや尊厳を取り戻すにはどうすればいいのでしょうか。私たちは、先祖から引き継いできた生命や生活、経済の基盤を奪われてしまいました。これを取り戻すことが大事だと思います。先祖が行ってきた川でのサケ漁を、私たちが行おうとすれば、密漁か特別採捕しかありません。これはどう考えてもおかしいと思います。

増殖事業で捕っている何分の一かでもアイヌに分ければ、直ちに資源には影響しないはずなのです。

私たちシベチャリアイヌトライブは、サケ捕獲権をはじめとするアイヌの権利を回復することを目的としていますが、ラポロアイヌネイションのこの裁判は、他人事ではありません。私たちの権利が回復してこそ、アイヌは誇りを持って、和人と対等に生きていけるのです。

ラポロアイヌネイションの裁判で、この私たちの思いを実現することができるよう、願っています。


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2024年12月27日、北大開示文書研究会