2020年12月18日
アイヌ民族へのヘイトスピーチを許してはならない
道見道議会議員の発言に強く抗議します。
北大開示文書研究会
共同代表 殿平善彦/清水裕二
去る11月24日、北海道議会環境生活委員会において、道見泰憲道議会議員は、アイヌ民族をめぐる道の施策をめぐって「アイヌの人々を甘やかしているのは国であり道であり」と発言した。その後適切でないとして「過保護にしている」と議事録を訂正したと報じられた。しかし、道見議員の発言の趣旨は何ら訂正になっておらず、道見議員の発言は深刻な問題をはらんでいると言わねばならない。近年、アイヌ民族への施策は民族共生象徴空間をはじめ変化をもたらしているのは事実であるが、それらの施策がアイヌ民族の自立と生活基盤の向上に寄与しているかを検証することは不十分であり、多くの問題を抱えていると思われる。アイヌ民族と国、道の関係を考えるとき、その歴史的経緯を無視することはできない。1869年、日本政府は蝦夷島を北海道と改称することで、それまでアイヌの自由の天地であったアイヌモシリを支配するに至った。その際、日本政府はアイヌ民族と交渉し、条約などを締結すべきであったが、それを怠り、一方的に戸籍への編入などを行い、土地を占有し漁業、狩猟などの権利を無視した。その結果、先住権を無視されたアイヌ民族は塗炭の苦しみを経験し、経済的落差と文化的偏見に苦しんできた。2007年、国際連合は「先住民の権利に関する国連宣言」を採択し、日本政府も賛成の一票を投じた。そこには先住民族の自治権、自己決定権が明記されているが、今日に至るまで日本政府はそれをアイヌ民族に認めるに至っていない。今、アイヌ民族への施策に必要なのは日本政府の過去のアイヌ政策への歴史的反省に基づいた先住権の承認であり、アイヌ民族の意向を尊重した政策の実行に他ならない。アイヌは「あまやかされ」たり「過保護」にされたりしていない。依然として和人との格差は存在し民族としての自立も保証されてはいない。アイヌ民族への歴史的反省を欠いた道見議員の発言はアイヌ民族へのヘイトスピーチであり、自ら責任を感じて道議会議員を辞任することを要求する。これを期に日本政府と北海道はアイヌ民族の先住権を尊重し、その実現に努力する施策を進めるよう強く求めたい。