本書を読めば、訴訟に至る小川隆吉、城野口ユリ、畠山敏、差間正樹各氏らの心からの怒り、そして、研究機関や政府が依然として植民地主義のまっただ中にいること、それは市民社会の責任でもあることを理解することになる。
──上村英明氏「週刊金曜日」2016年7月15日号
「アイヌの遺骨はアイヌへ返せ」とのあたり前の論に立ちふさがる論理の破綻ぶりに驚かされる。
──保坂正康氏「朝日新聞」読書欄2016年6月26日
アイヌへの差別、人権問題を浮き彫りにしながら、日本政府が進めるアイヌ政策を「名ばかり」と告発。
──「苫小牧民報」2016年4月21日
国は多くの遺骨を白老町に集約するとの方針を示しているが、それは名ばかりの返還に過ぎない。この問題を考えてゆくためにも、極めてタイムリーな刊行となった。
──「毎日新聞」2016年4月23日
「現在の政府方針では、遺骨のほとんどが故郷に戻されることなく、国が胆振管内白老町に設置する慰霊施設に集約されかねない」と懸念。
──「北海道新聞」2016年4月27日夕刊
アイヌ民族が遺骨を集落(コタン)単位で弔う習慣を持つことなどを紹介し、地域への積極的な返還を求める。
──「朝日新聞」2016年5月30日
19世紀後半から1970年代まで、北海道大学を中心に全国の大学の教授らが、北海道やサハリン、千島列島など各地のアイヌ・コタンの墓地を曝いて、大量の人骨と副葬品を研究室に持ち去った。明治政府が新しく支配したばかりの事実上の「植民地」の先住民は、死者であれ生者であれ、単なる研究対象でしかなかった。
しかし奪われた側のアイヌは、むろんそうではない。頭蓋骨計測研究のブームが去り、残されたアイヌ人骨や副葬品は学内の奥深く仕舞い込まれ、あるいは散逸し、忘れ去られた。しかしそうされた側は、忘れたくても忘れられない。たとえ百数十年が経とうとも……。
本書は、今も大量の遺骨を保管する北大を相手に返還訴訟を起こしたアイヌたちの闘いを通して、先住権を無視したまま日本政府が進める「名ばかりのアイヌ政策」を告発する。
アイヌの遺骨はコタンの土へ
北大に対する遺骨返還請求と先住権
Return the Ainu remains to Ainu Kotans
北大開示文書研究会[編著]
2016年4月20日 緑風出版[発行]
四六版並製/304頁/2400円+税
ISBN978-4-8461-1604-0 C0036