国際連合・人種差別撤廃委員会総括所見から
人種差別撤廃委員会「日本の第10回・第11回定期報告に関する総括所見」(抜粋)
CERD/C/JPN/CO/10-11 2018年8月30日
原文:英語、外務省仮訳文書から抜粋
アイヌの人々の状況
締約国によるアイヌの人々の権利を保護し促進する近年の取組に留意しつつ、委員会は、以下について懸念する。
- アイヌの人々の雇用、教育及び公的サービスへのアクセスにおける差別が引き続き報告されていること、並びにある程度の改善は見られるものの、北海道におけるアイヌの人々とその他の人々との間で生活水準に格差が依然として存在すること
- アイヌの言語及び文化の保存のための努力がなされているものの、アイヌの人々の土地及び資源に対する権利並びに言語及び文化遺産が十分に確保されていないこと
- 協議体におけるアイヌの人々の割合が依然少なく、アイヌ政策推進会議に占めるアイヌの人々の割合が約3分の1のみであること(第5条)
先住民族の権利に関する一般的勧告23(1997年)を想起し、委員会は、締約国に以下を勧告する。
- 雇用、教育、サービスへのアクセスにおけるアイヌの人々に対する差別の解消のための努力を強化すること
- 「第3次アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策」等の現在とられている取組の実施及びその影響の監視を確実に行うこと、並びに次回の定期報告において、アイヌの人々の生活水準向上のためにとられた同措置及び他の措置に関する情報を提供すること
- アイヌの人々の土地及び資源に関する権利を保護するための措置をとること、並びに文化及び言語に対する権利の実現に向けた取組の強化を継続すること
- アイヌ政策推進会議及びその他の協議体におけるアイヌの代表者の割合を増やすこと
人種差別撤廃委員会「日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する総括所見」
CERD/C/JPN/CO/7-9 2014年9月26日
原文:英語 外務省仮訳文書から抜粋
アイヌの人々の状況
アイヌの人々の権利を保護し促進するための、締約国による努力に留意する一方、委員会は、以下を含む締約国により展開された対策における不十分な点を懸念する。
- アイヌ政策推進会議および他の協議体におけるアイヌの代表者の人数が少ないあるいは不十分なこと、
- 北海道外に居住する人達を含むアイヌの人々とそれ以外の者との間にある、多くの生活分野、とりわけ教育、雇用、そして生活水準におけるなかなか解消されない格差、
- 土地と資源に対するアイヌの人々の権利の不十分な保護と、彼ら自身の文化と言語への権利の実現に向けた緩やかな前進(第5条)。
委員会は、先住民族の権利に関する一般的勧告23(1997年)の観点から、先住民族の権利に関する国際連合宣言を考慮し、締約国に以下を勧告する:
- アイヌ政策推進会議および他の協議体におけるアイヌ代表者の人数を増やすことを検討すること。
- 雇用、教育そして生活水準に関して、アイヌの人々とそれ以外の者の間で依然として存在する格差を減らすために講じられている対策の実施を強化、加速すること。
- 土地と資源に関するアイヌの人々の権利を保護するための適切な措置をとり、文化と言語に対する権利の実現に向けた措置の実施を促進すること。
- 政府のプログラムや政策を適合させるために、アイヌの人々の状況に関する包括的な実態調査を定期的に実施すること。
- 前回の委員会の総括所見パラグラフ20においてすでに勧告されたように、独立国における原住民及び種族民に関するILO第169号条約(1989年)を批准することを検討すること。
人種差別撤廃委員会第76会期「本条約第9条に基づき締約国より提出された報告の審査・人種差別撤廃委員会の総括所見」
CERD/C/JPN/CO/3-6 2010年4月6日
原文:英語 外務省仮訳文書から抜粋
B.肯定的側面
委員会は、締約国によるミャンマー難民のパイロット的な第三国定住プログラム(2010年)に注目する。
委員会は、先住民の権利に関する国際連合宣言(2007年9月)に対する締約国の支持を歓迎する。
委員会は、締約国がアイヌ民族を先住民族として認めたこと(2008年)に祝意を表し、アイヌ政策推進会議の創設(2009年)に注目する。
アイヌを先住民族として認識したことを歓迎し、象徴的な公的施設建設や北海道外のアイヌの地位に関する調査の実施のための作業部会の設立を含む締約国のコミットメントを反映した施策に関心をもって留意するとともに、委員会は以下について懸念を表明する。
- 協議フォーラムや有識者懇談会へのアイヌ民族の代表が不十分であること。
- 北海道におけるアイヌ民族の権利の発展及び社会的地位の改善に関する国家的な調査が欠如していること。
- 先住民族の権利に関する国連宣言の実施に向けた進展がこれまで限定的であること(第2条及び第5条)。
委員会は、協議を、アイヌの権利に取り組む明確で方向性のあるアクション・プランを持った政策及びプログラムに転換するために、アイヌの代表と協力して更なる措置を講ずること、並びに、協議におけるアイヌ代表者の参加を増やすことを勧告する。また、アイヌ代表者と協議しつつ、先住民の権利に関する国連宣言などの国際的コミットメントの検証・実施を目的とする第三者作業部会設置を検討することを勧告する。委員会は、北海道のアイヌ民族の生活水準に関する国家的調査を実施することを要請し、本委員会の一般的勧告23(1997年)を考慮することを勧告する。さらに、委員会は、締約国に対し独立国における原住民及び種族民に関するILO169号条約(1989年)を批准することを検討することを勧告する。
委員会は、バイリンガル相談員や7言語による就学ガイドブックといった締約国による少数グループへの教育を促進する努力に評価をもって留意する。しかしながら、教育制度における人種差別克服のための具体的施策の実施に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。さらに、委員会は以下の事項を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する:
- アイヌの子どもやその他の国のグループの子どもが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受ける適切な機会の欠如
(訳注:訳文中の「締約国」は日本を指す)
外部リンク
外務省「人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)」のページ